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手で作った原型を「プラモデルのパーツ」に加工していく
── フィギュアライズバストは、原型をプロのモデラーさんにお願いしていると聞きました。それはなぜですか? 三宅 以前に「ファインディング・ドリー」のクラフトキットを担当したとき、静岡ホビーセンターで形を作ってもらいました。いつもはメカを作っている工場ですので、曲面ばかりのドリーとニモをデジタル上で造形するのに、たいへんな手間と時間がかかってしまいました。ですので、フィギュアライズバストではモデラーの田中冬志さんに作っていただいた原型をスキャンして、さらにCADを貼りなおす作業をしています。ただし、「ラブライブ!」ではデジタルで原型を起こすなど、シリーズによって、少しずつ工程は違います。
── 手で作った原型をスキャンして、さらにCADを貼りなおす作業には、どういう意味があるのですか? 三宅 単にスキャンしただけでは、金型に落とし込んでパーツ化することができないからです。プラモデルの金型はとても硬いので、パーツを抜く角度に大きな制約が生まれてしまいます。不自然にならない形でパーツを抜いて、なおかつ組み立てやすく分割しなくてはなりません。プラモデルのパーツとして最適の形で成形できるよう、データを作り直すわけです。それと、瞳は平面ですので、アウトラインしかスキャンすることはできません。
── 瞳は、原型ではどうなっているのですか? 三宅 原型に直接、描きこまれています。その線を見ながら、設計チームが型を起こしています。金型の構造も複雑で時間がかかりますから、瞳のパーツだけは早めに設計に入ります。
── レイヤードインジェクションありきで始まった企画だそうですが、いっそのこと瞳はシールにしてしまおうという話は出なかったのですか? 三宅 もっとも初期の企画時には、シールという話もありました。ただ、シールにすると、貼り方によってズレてしまいます。同じクオリティのものをユーザーの皆さんに届けるには、金型で成形するのが一番なんです。金型なら決してズレないし、シールにはない奥行き感を出せます。
── 今回の初音ミクは、瞳も顔も一体成形で、口のピンクのパーツ以外は、完全なワンパーツですね。 三宅 1つひとつのアイテムについて、こだわるポイントがあります。ミクの場合は、シリーズの根本の推しどころだった顔をワンパーツにすることにこだわりました。瞳の緑色は、ちょっと透ける素材で成形してあります。眉毛も瞳と同じ緑色なので、ちょうど「瞳と顔を一体成形で再現する」意図にフィットしました。
── 眉毛部分は後ろから黒いパーツを当てて、透けないように工夫しているんですね。多色成形で使える色は、最大で4色まででしたね? 三宅 そうです。ですから、3色で成形できてしまった場合は、もう1色をイヤリングとして一体成形したり、葉っぱの飾りを同じランナーに入れたりしています。最低でも1枚は多色成形のランナーを入れて、なるべくシールではなく、成形色で色分けを再現するように努めています。