試写会2回、劇場2回と計4回見ました。
「サカサマ」という一見突拍子もない設定ですが、ストーリー自体は王道と言えるもの。空を忌み嫌うアイガとサカサマの地下集落というふたつの世界にまつわる「謎」が、エイジとパテマの2人の物語に沿って解き明かされていくのですが、吉浦監督がインタビューなどでおっしゃっていた、「子供やお年寄り、いろんな層に観ていただけるように」という言葉通りの作品で、普段アニメをあまり見ない人たちにも受け入れやすいと思います。
演出面でも、劇中で幾度となくエイジとパテマそれぞれの視点に変わるのですが、それが効果的に使われています。「吸い込まれそうな空」という表現はよく使われますが、この映画ではそれ以上の「空に落ちる」という感覚を味わえます。これは是非大きなスクリーンで体験して欲しいところです。背景や作画も非常に細かいところまで丁寧に描かれており、音楽も含めて一切の手抜きなし、といったところでしょうか。公開が1年延びているのですが、それだけの手間をかけたということでしょう。
声優さんの演技も見所のひとつです。エイジ役の岡本信彦さんは多くの実績をお持ちの役者さんですが、パテマ役の藤井ゆきよさんは今作品が初ヒロイン。「初々しさを重視した」という吉浦監督の目論見通りに、パテマを演じきっています。完全にパテマです。脇を支えるキャラクターたちも「この人しかいない」といえるキャスティングで、収録の時点(2年前)ではまだブレイクする前だった内田真礼さんの起用も含めて、吉浦監督の慧眼っぷりには感嘆するばかりです。
一度だけでも作品の魅力は充分に伝わると思いますが、2回、3回と見ることで意外なところに伏線が紛れ込んでいたり、キャラのセリフに大きな意味があったりと、新たな発見ができます。できれば何度も劇場に通って観て欲しいですね。自分もあと4回は観たいです。