戦車道には人生に大切なことが詰まっている。#garupan
観賞手段:劇場
本作を一言で説明すると「大洗女子が勝って学園を取り戻す話」で済んでしまう。
恐ろしくシンプルな構造の物語である。
たったこれだけの物語を、ここまでに密度の濃いエンターティメントに仕上げる手腕は凄まじい。
大抵の作り手だと何らかのひねりを加えないと間が持たないし、個性を発揮できないものである。「エヴァ」「まどマギ」など、既存ジャンルにひねりを加える事で出来た名作は多い。「ガンダム」すらそうだ。「ラブライブ!」でさえ優勝まで紆余曲折してる。
そんな中で本作は、確かに終始情報量の密度濃い映像の連続だったが、学園奪回の大筋の前には皆ディテールである。
福田から始まった知波単の意識改革とか、頼れる同志かーべーたんの「街道の怪物」の心意気とか、今自分達にできることを求めて更に成長しようと言うウサギさんたちとか、枚挙に暇がないほど心揺さぶる光景が凝縮されているが、それでも大筋の前にはディテールに過ぎ無い情報である。
この細かなディティールを積み重ねて数多くのキャラ達の個性を際立たせながら、揺るぎない骨太な本筋をきっちりと見せる。この重層構造が水島努作品の醍醐味と言えるだろう。
なお、再び学園奪回が目標になったことについて、「TV版の繰り返し」と言う声もあるが、大きく違うのは大洗女子に戦車道を経て積み上げた物が有ることである。実績と自信、鍛錬と技術、そして何よりも好敵手達とも結ばれた絆である。挫折を経たことで歩みだした西住みほの戦車道、それが生んだ縁が22両の大増援として互角に戦える機会を得たのである。
戦車道で守ったものを取り上げようとした大人達を、戦車道で得てきた力で奪回する。きちんと繋がる物語である。
と言うか、ガルパンはやはりTV版12回+総集編2回、OVA、そして劇場版、垣根無くみんな一緒で「ガルパン」でいいと思う。
また本作は音楽の起用にもまた優れている。開幕を告げるBGM「戦車道行進曲」が当初はただの軽快なマーチだったのが、この曲とともに始まる大洗女子起死回生の逆転劇の数々に、今や曲を聞くだけでも涙がでるほどなのだが、本作ではそんな名曲たちの中にフィンランド民謡「Säkkijärven Polkka」が加わった。なぜにこの曲があのBT-42の大活躍を更に熱く彩るのか、曲だけで聞けば全く解らない。ガルパンはそんな神がかった楽曲起用が実に多い。
それから劇場版ということで大スクリーンを意識したか、戦車達の挙動が若干派手であるが、これに対して「リアルではない」と言う不粋な戯言をドヤ顔で言う不心得者が余には若干いる様だが、実機が見たければ軍事資料映像を見れば良い。
こっちは戦争ではない、戦車道アニメなのだ。この差は大きい。それが分からない某政党と同レベルの人は口を出さないでもらいたい。
ともかく、本作ほど徹頭徹尾エンターテイメントに徹した映像作品はそうそう無い。時流に乗って話題になる作品もあるが、事前に誰も何の期待もしていなかったところから始まって、これだけのムーブメントを打ち立てた「ガルパン」は、いつ繰り返して観ても色あせない、長きに渡り讃えられていく作品となるだろう。
- ストーリー
- 5.0
- 作画
- 5.0
- キャラクター
- 5.0
- 音楽
- 5.0
- オリジナリティ
- 5.0
- 演出
- 5.0
- 声優
- 5.0
- 歌
- 5.0
満足度
5.0
いいね(1)
2015-12-25 09:23:45